Japan Optimist Dinghy Association クラスルール計測委員会


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 安全規定・海上計測ガイド 2011/2/10更新



みなさんにとって、安全で公平なレースとなるように、ルールに従っているかについて

第1レースのスタートの前までに行われる、陸上の計測・検査だけではなく、

フィニッシュ直後の海上でも、以下の10項目を優先して検査されます。


 はじめに 

海のスポーツで安全確保はもっとも重要な課題です。

厳しい自然と対峙し、自分だけの力で困難を乗り越え、能力の限界を極めるとの目的は
一歩間違うと、最悪時には、あってはならない事態や、けがをする恐れがあります。

練習や、レースでは万全のレスキュー環境を整備するとともに、
それぞれのOP艇には、クラスルールで、守らなければならない安全規定が決められています。


この一番大切な、生命や装備(財産)を守るという意識を高めるために、安全規定をよく理解して下さい。

OP協会では、レースのフィニッシュ直後に海上計測を実施する方針です。

その時に、この安全規定を守らなくてペナルティを受けてしまった艇について、
 「安全とはなんだろう?」「どうして得点が悪くなるのだろう?」
と皆さんで考え、学び、議論していただくことが、少しでも事故防止につながればと願っています。


 チェックポイント

 1. @浮くもやいロープとその取り付け方

 2. Aあかくみ、Bパドル、Cダガーボードはハルにしっかりと取り付けてあること

 3. Dライフジャケットは適切な状態で着用されていること

 4. E笛は正しく装備されていること

 5. ハル、セール、フォイル、スパーに「大会スタンプ」が押してあること

 6 アップバッグの浮力が適切な状態であること

 7. ラフ計測バンド(ブラックバンド)における、マストに対してセールの位置が正しいこと

 8. セールのがらみロープにおけるマスト、ブームとのすき間(最大10o)

 9 ブームとブームスパンのロープ(ブライタル)とのすき間(最大100o)

10. マストは転覆した時の脱落防止のために、ロックする装置等がついていること

   
ペナルティ : これらの、クラスルールや安全規定に従っていない場合は、その艇はレース委員会から抗議され、ペナルティについては、失格より軽い罰則となる場合があります。 最終判定は、ジュリーの裁量により、その量刑が判断されます。 軽い違反が繰り返された場合には、より厳しい判決となります。このジュリーの裁量によるペナルティの略語を(DPI)discretionary penalty imposedとします。

計測員より: もし、新しいシステムで、何かわからないことがあれば、大会計測員の所に行き、聞いてください。私達は、喜んでお応えします。


 海上計測でチェックされるクラスルールの説明

● 青字は、海上計測で優先して検査され、抗議の対象となるルール部分です。
1 浮くもやいロープとその取り付け方

2 あかくみ、パドル、ダガーボード、はハルにしっかりと取り付けてあること
     (
あかくみが2個以上ついている場合には、どのあかくみもしっかりと
     ハルに取り付けなければなりません。)
[3.3.4]
ダガーボードは浮くものとし、艇に取り付けておかなければならない。ダガーボードおよびバテンを貫通する穴1個を、適当な場所に、空けてもよい。その直径は10mmを超えてはならない。ダガーボードをハルに取り付けるために、弾性コードまたはラニヤードを使用してもよい。1個の小さいシャックル又は閉じる方式のプラスチックフックを、コードまたはラニヤードを、ハルまたはダガーボードのいずれかに、取り付けるために使用してもよい。

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[4.3]
次の装備を、レース中艇に積まなければならない:

(a)1個以上のベイラーを、ラニヤード(複数)または弾性コード(複数)でハルにしっかり取り付けなければならない。1個のベイラーは最低1リットルの容量がなければならない。
(b) 1本の浮くもやいロープ、直径5mm以上、長さ8m以上のもので、マストスォートかマストステップにしっかり留めなければならない。
()パドルはラニヤードまたは弾性コードでハルにしっかり取り付けなければならない。
3ライフジャケットは適切な状態で着用されていること

4笛は正しく装備されていること
ヘルムスマンは、少なくとも EN393:1995 (CE 50 ニュートン)、 またはUSCG Type III、 またはAUS AS1512 またはAUSAS1499.の浮器具基準に適応した個人用浮揚用具を着用しなければならない。

製造者から供給されたすべての装着装置は意図されている方法で使わなければならない。

ウエットスーツおよびドライスーツは、個人用浮揚用具として認めない。

[4.2(a)]
笛は個人用浮力体にしっかりと取り付けられていなければならない。 

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5ハル、セール、フォイル、スパーに「大会スタンプ」が押してあること

[4.5]
大会中にハル、セール、スパーまたはフォイルが使用不可能な ダメージを受けない限り、大会を通してハル、セール、マスト、ブーム、 スプリット、ダガーボードおよびラダーは1つしか使ってはならない。
何らかの理由でそれら装備を交換する場合は、レース委員会の認可を得なければならない。

上記に基づき、大会計測を受けた証明として、スタンプが押されます。

6. アップバッグの浮力が適切な状態であること

[3.2.7.1]
ハルには、強度のある繊維で補強された材料で作られた膨張式エアバッグの形状の、浮力体3個を取り付けなければならない。
各浮力体は、45±5リットルでなければならない。
各浮力体は、空気の偶然の放出を確実に防止する密閉栓を装備しなければならない。(すなわち、逆止弁やネジ式のスレッデド弁)。
各浮力体の最小重量は、200グラムとする。 


従来艇はこちら


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7. ラフ計測バンド(ブラックバンド)における、マストに対してセールの位置が正しいこと

8. セールのラッシングロープ(ガラミ)におけるマスト、ブームとのすき間(最大10o)

[6.6.3.1]
ラフ計測バンドの上縁は、No.1バンドの下縁より上方へはみ出してはならず、またラフ計測バンドの下縁は、No.2バンドの上縁より下方へはみ出してはならない。スロート部分の、規則3.5.2.6に関連する2個のマストの穴またはラッシング用アイは、ラフ計測バンドのどのような部分も、No.1バンドの下縁より上方へ上がることを防ぐために使わなければならない。

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[6.6.3.3]
セールのラフは、マストから10mm以内になるように、各アイレットでマストにしばらなければならない。


[6.6.3.4]
セールのフットは、ブームから10mm以内になるように、各アイレットでブームにしばらなければならない。代わりに、タックのアイレットで、ブームまたはその仮想線から10mm以内になるように、ジョー艤装品にしばるか、またはジョーまたはジョー艤装品の2個の穴を通して取り付けるか、のいずれかでよい。

9. ブームとブームスパンのロープ(ブライタル)とのすき間(最大100o)
[3.5.3.8]
ブームにメインシートまたはメインシート・ブロック(複数)をとる方法は、任意である。(ただしそれらはブームに沿って移動できないものとし、
また張り索とブームの間の最大隙間は、ブームに沿ってどの位置においても、100o以内でなければならない)。ブロックの位置またはブーム・ストラップの長さは、レース中に調節してはならない。

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10. マストは転覆した時の脱落防止のために、ロックする装置等がついていること
[3.5.2.11]
艇が転覆した時に、マストがステップから抜け出すのを防ぐため、ロックする装置または他の設備を取り付け、使用しなければならない。

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●解説

2. ダガーボード
ランニングでチンをした時に、起こすとセンターボードがハルから離れていった
という経験はありませんか?

全日本時での140艇など、参加艇のうちの多くが、もし、この状態になれば、
レスキューはたまりません。最新の記事については下記を参照、

CR3.3.4(ダガーボード)の違反となる改造について
3ライフジャケット
4.笛


4.2(a) 

@難解な文章:

   2009年から文章の表現が難しくなりました。 これはISAFにて使用する単語で、意味の誤解を
   避けるために、どんどん専門的な用語に進み、それを利用するJSAFやIODAも右にならえ、
   をしているからです。

   要は規格品(厳密なテストを受けた形式)を使用せよ、たとえば、お母さんの愛情のこもった
   手造りのライジャケはテストしていないのでダメ。という程度に受け止めてください。


B 笛について、こんなことがありました。 :

   2010年OP東日本/葉山の海上計測で3件の笛のPFP違反がありました。

    ア)一人は笛を持っていなかった。
    イ)もう一人は、笛は持っていたが、ヒモがなかった。
    ウ)最後の一人は、笛も、ヒモもあったが、ただし笛とヒモが結ばれていなかった。

   さて、この3つの場合をどう思いますか?


   イ) とウ)は笛を持っていたのだから、許してもいいじゃないか。 と思えますか?

   2009年の全日本/江の島で、笛は鳴るけれど、誰が吹いているのかわからない場面がありました。
   その音を頼りに、捜索をしてやっと見つけた時は、その選手は艇のデッキにうずくまって、
   外から見えない状態でした。すぐに救助してから選手に聞くと、セーリング中悪い波で落水し、
   水を飲んだけれども、なんとか這い上がり、そのまま気を失ってしまったと話しました。
   その後、気が付いたけれど、気分が悪くて動けず、笛を吹くのがやっとだったのです。

   この場合、ライジャケと笛を結んでいた細いひもと、笛の音だけが、選手の命の頼みの綱だったかも
   しれなかったのです。
   PFPの選手達のように、もし、あの時、その選手が笛を持っていなかったら・・・・。
   もし、落水時に、笛が海中に落ちてしまったら・・・。
   安全を考える場合に、もし○○・・・。 という言葉は、使いたくありませんね。
6. アップバッグ

アップバッグは、選手の命と艇を守るための、いちばん大事なパーツです。 これが十分に膨らんでいないと、チンを起こしても再び帆走する事ができません。


@ 完全に膨らんでいる事:

  ルールには、「60kg以上の鉄の重量物を置いて、ボートを浸水させた場合、
  ガンネルが水面上に出て浮いていなければならない。」 というのがあります。 
  60sとは、大きな選手の体重です。

  2009年の全日本時に、荒天でこの状態のトラブル艇を発見しました。
  しかし右舷後部のガンネルは水没していて、それでも選手は、一生懸命あか汲みをしています。 
  見ると、右アップバッグの栓が抜けていてペシャンコ、後ろのアップバッグも半分つぶれていました。
  この状態では曳航もできないので、マストを抜き、ハルをゴムボートの上に載せて、
  全速でハーバーに返りました。
  もし、さらに状況が悪くて、もっとトラブル艇が多くなり、救助が遅れれば非常に怖い思いを
  したでしょう。
  たまたまレスキューが大型で、艇を搭載できた事は、運が良かったとしか言いようがありません。

  スタート前のパトロール、や海上計測で、十分に膨らんでいない艇には警告を与えます。
  水船状態ではエアーが足らないとバッグが浮力でベルトを引っ張りデッキとの間隔が大きくなって、
  ガンネルが水中に没しやすくなるからです。 45±5リットルを計測するための専用の袋を
  用意することもできますが、それよりも危険状態の膨らみ方では、写真撮影により、
  抗議の証拠をプロテスト委員会に提出できると考えます。

A密閉栓(バルブ)について:

  簡単に空気が抜けないようにと規制されています。

  具体的には、
   A 逆止弁タイプ= バッグ内の気圧を高めることにより、弁を内側から圧迫して
               空気漏れを防ぐ、外から中へ空気は流れるが、通常、中から外へは
               流れない。

   B ねじ式のスレッデド弁タイプ= パイプの中にねじが仕組まれており、ねじを締め込むこと
                により、徐々にロックされるので、長期使用で摩耗しても性能が保たれる。

   禁止されるタイプ=穴に栓を押さえて閉めた部分の摩擦力だけで空気漏れを防ぐ
              単純な仕組みを採用したもの。

7ラフの計測バンド(ブラックバンド)


 <ブラックバンドの位置>

 
マスト側

  1バンドは、マストの頂部からバンド下縁まで 最小で610o
  2バンドは、マストの頂部からバンド上縁まで 最小で635o

 
セール側

  セール・スロートの計測点からセールバンドの上まで 最大600o


9ブームとブームスパンのロープ(ブライタル)とのすき間(最大100o)

ブームからメインシートをリードするために、1点からではテンションでブームが曲がるので、2点からリードして3角形が出来ます。

この距離が大きいと、魔のトライアングルとなり、タック時に頭が引っかかって(ひどいときは首吊り状態)沈をする場合があるので、クラスルールで100o以内と決められています。
10.マストロック

マストをマストホールに入れれば帆走はできます。

しかしこれは重力でのっているだけなので、チンをすると抜けます。
完全に抜ければメインシートが流れ止めになり離れないのですが、マストステップで抜け、
マストスォートでは抜けないとなると厄介です。 

チン起こしの最中に、マストがマストスォートをコジリ、メリメリとかの音がします。そのまま起こすと
梃子の原理でシリアスダメージ(帆走不能な損傷・致命傷)に発展し、レース復帰は不可能です。
この悲劇を防ぐため、2つの方式があります。

   A 市販のロック製品=
          マストスォートの下側でロックするタイプ →
←  B ガラミロープ式  =
          マストスォートとマスト下部のクリートとを結ぶ
どちらが良いかとの比較は

  A 短所 = ロックの位置をマストスォートの下側で上の方にしなければならないので
           手が入りにくく操作が固いので、ロックを掛けにくい。 ※

    長所 = 強めの力で引っ張れば簡単にロックが外れる。


  B 短所 = 手がかじかんだり、手袋をしていたり、荒れて揺れる海面では結びをほどきにくい。※

    長所 = 出艇時では結ぶのが簡単、値段が安い。

 ※コメント: Aはマストでのロックを付ける位置が低いと、
   マストステップから外れて、危険なので必ず、基部の
   マストカップの深さより短い距離に調節してロックの位置を
   決めること。(右図を参照)


結論的にはAをオススメします。

理由: レスキュー活動では、荒れた海上で素早くマストを引き抜き曳航する場面が一番多いと思う、そんなときにはロック式の方が便利、また、ガラミ式ならばカッターで切った方がいいので、レスキューのツールの中にはぜひ入れて欲しい。

レース中以外の安全規定

規定違反でペナルティを受けるのは、レース中だけです。
練習中では適用されません。では、何をやってもいいかというと、そうでもないと思います。

世界中のOPを通じてセーリングスポーツを楽しんでいる人たち、海の魅力の深さを追及している人たちの経験がベースとなり、
国際OP協会に提案され、採用された実用的なクラスルールです。
練習では安全規定にビクビクする事は必要ありません。うっかり忘れることも、たまにはあるでしょう。

大切なことはクラスルールの底に流れる安全への考え方を尊重していただければ申し分ない事と思うのです。


あとがき 

海上計測をしていて、計測の順番を考える方法で、ひとつ、迷うことがありました。

OCSの選手を除くべきなのか? それとも、計測するのか?

答えは一つ、「検査をしよう。」でした。なぜなら、安全規定は悪い得点を与えることが目的ではないからです。
OCSならば、たとえ違反があったとしても、既に一番悪い得点なのでそれ以上のペナルティは課せられません。
しかし安全規定に間違いがあれば、参加選手として公平に、注意し、反省してもらう
ことを理念といたします。

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